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2019年09月26日

建築コストに影響を与える要因について①

建築コストは、設計およびその他多くの要因によって相互に影響されており、最近は発注者の要求の多様化、技術開発の進展とともに、構造、建物形状、仕様の選択肢も広がってきています。このように多様な選択肢から、どのような設計とするかにより、建築コストが大きく異なるということを認識しておくことは大変重要です。

では、具体的に、どのような要因が建築コストに影響を与えるのかを見ていきたいと思います。

⒈地域・土地の要因

  1. 建設地域
  2. 交通網の発達や建設資材の生産地・製造所の全国平準化により、資材、機器などの価格差は、沖縄および離島を除くと比較的小さくなってきています。むしろ労務費の地域間格差が大きく、これは大都市と地方との経済活動レベルや消費量、建設投資量の差によって生じています。
    建築コストを地域別に見てみると、東京およびその周辺の建築費が突出、次いで高いのは大阪、そこに日本海側の金沢、新潟と札幌などが続きます。積雪地・寒冷地での冬期工事は割高となり、工事が夏期に集中、建設機械、労務の効率が低下して、それが工事費の上昇を招いていると思われます。

  3. 敷地場所
  4. 工事費はその立地条件によっても大きく違いが生じます。工事現場が繁華街に位置する場合、地価水準が高く、通常、容積率も高いため、ほぼ敷地一杯に建てるケースが多いのですが、得られる敷地スペースの制約条件などから、資材・建設機械の搬入や置き場の問題、近隣建物への安全・養生、機会の騒音・振動対策、警備・保安にかかる費用など、一般市街地や郊外へ建てる場合に比べ、共通仮設費や諸経費が割高になる傾向があります。
    一方で山間地や過疎地の場合は、建設地までの資材輸送費用が増大します。また、山間地では、悪路割増しや工事用の電力・給水などのインフラ供給施設の設置費用、侵入道路の設置コストが生じる場合は、その費用を見込んでおく必要があります。

  5. 地盤の特徴
  6. 地盤条件の良否は、杭・地業工事の内容に大きな影響を及ぼします。その状況によってはこれらの工事がコスト比率も大きなウェイトを占めるケースも少なくありません。杭・地業工事は、企画・設計の初期段階では不確定要素が大きく、コストの予測が難しい費目の代表例。精度の高い概算を行うためには、敷地の地盤調査を行うか、あるいは参考資料として近隣のボーリングデータを入手しておく必要があります。また、地下水位も、排水・山留・掘削などの土工事費用、地下室の防水、防湿工事のコストなどに影響します。

⒉設計の要因

  1. 建物形状
  2. 建物形状による建築費の変動要因として、平面形状や細長比などが挙げられます。これらは敷地形状や前面道路、方位、各種法規・規制、デザイン性などによって決められますが、その平面形状の違いによる建築費の影響は非常に大きいといえます。 一般に、建物の形状が単純になるに比例して、床面積あたりの単価ベースでは低くなる傾向があります。
    都心の繁華街では、敷地上の制約から細長い建物や複雑な形状のものが頻繁に見られますが、これらは床面積あたりの外壁周長が大きくなり、床面積あたりの単価が髙くなります。さらに、構造や設備などの工事費も上昇する傾向が見られます。

  3. 建物規模
  4. 一般に、同一水準の仕様であれば、規模の経済が働き、床面積の大きいものが、小さいものよりも単価が低くなります。具体的な理由として、仮設道路、水道光熱費、現場事務所等の共通仮設費などの間接的なコストは、必ずしも延べ面積の増大に正比例して上昇しないためです。むしろ全体のコストに占めるこれらの費用の割合は、相対的に低くなる傾向があります。
    また、直接工事費についても、床面積あたりの材料歩留まり率、労務作業の効率などが、大規模の建物のほうが高くなります。
    つまり、延べ面積が増大すると、同一工種の工事費が大きくなり、施工の機械化、反復による習熟効果、施工上の無駄の節減などにより量産効果が高まり、単位面積あたりの労働量が減少します。材料メーカーからの購入に関しても、量的にまとまるほど購入単価の低減につながります。 更に、延べ面積に対する外周面積の比率も、建物の規模が大きくなるほど小さくなる傾向があり、この点もコストに大きな影響を及ぼします。

  5. 共有スペース
  6. 集合住宅を例にとると、その住戸占有率は通常8-9割前後、共有スペースは1-2割程度と言われています。集合住宅の平面計画を進める上で、超高級仕様を除くと、発注者側の要望により、共有部分を必要最小限にまとめてほしいと言われるケースも多くみられます。理由は、これら共有スペースは直接的に収益をもたらすものではないにもかかわらず、建設工事費に加え、運用時の空調・照明・清掃等のランニングコストがかかるためです。
    一方で、大規模な集合住宅や事務所ビルなどでは、共有スペースを充実するため、エントランスホールや廊下に広いスペースを割いているケースや、高級感を演出するため余裕ある空間を設置するケースなどもよく見られます。

  7. 階数
  8. 一般に、階数と建築工事単価の関係は、Uカーブを描くと言われています。5-7階建てが最も経済的、階数がそれ以上でもそれ以下でも、工事単価は上がる傾向があります。低層の場合は、延べ面積あたりの外壁面積、屋根面積の比率が高まり、高層の場合は、工期の長期化、資材の揚重手間、機械にかかるコストの増大など、仮設費用の増加がみられ、いずれの場合も、経済性の低下を招きます。
    また、構造コストについては、階数の増加は自重の増加につながり、柱の強度を高める必要が生じ、このことが鉄筋量・鉄骨量・コンクリート量などが増大につながり、コスト増となります。
    仕上・設備については、階数の増加とともに、規模の経済が働き、低減する傾向が見えます。各階の反復による習熟効果、大量購入によるメリットなどがその理由です。一方で、防災関係のコスト増、揚重運搬コスト、設備容量・配管工事コストの増大などもあり、建物個別の状況によります。

  9. 階高
  10. 階高を下げると、柱・壁などの構造コスト、内外装の仕上コストが低減し、全体の構造コストを下げる効果が期待できます。面積・階数を変えず、階高のみを増減することによりコストの低減を試みることがあるのはこのためです。

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