建築プロジェクトにおいては、発注者の投資金額に対して得られる価値の最大化を図る必要があります。このための一連の活動はコスト管理と呼ばれ、「コストプランニング」と「コストコントロール」の二つの機能に大別することができます。今回は、「コストプランニング」について説明します。
⑴ コストプランニング
購入する建物の価値は、必ずしも、かけたお金に比例するものではありません。同じお金をかけても、有効に使う場合と、無駄な使い方をした場合とでは、対価として出来上がった建物の価値は大いに異なります。したがって、限られた予算内で最も価値の高い建物を作ることが、設計者をはじめとした専門家に課される使命であり、また、そのように働きかけることが発注者にも求められることになります。出来上がった建物に期待する機能と、これに対応する投資コストとの関係を定量的に把握し、発注者にとって最大価値を得られるように設計をすすめていくということです。この一連の活動を、コストプランニングといいます。コストプランニングは、具体的には、以下の3つの役割に大別されます。
- コストの予測 本来、建築コストは、建物が出来上がってからでなければ、確定されません。設計段階においては、あくまで予測です。したがって、的確なコストプランニングを行う前提として、計画の建物が実際いくらかかるかを、適切な概算手法等を用いて、可能な限り精度の高いコスト予測をせねばなりません。
- 最適にコストを配分する コストプランニングに求められる機能として、コストを最適に配分する役割があります。建物の価値を高めるには、建物の持つ機能や各部分の間に、全体コストがバランスよくつかわれていることが必要となります。ある特定部分にお金をかけすぎて、他の必要な機能にお金がかけられないというような状況では、建物の価値としては望ましいものとはなりません。
- 費用対効果の向上を図る 予算に見合った品質水準を確保するため、「ある箇所について、もっとよい代替案(設計案)はないか?」「この仕上げ材料は要求水準を満たしているのか?」などといった内容について検討をおこない、求める要求内容とコストを的確に把握し、設計者などに働きかけていくことが求められます。これらは、設計VEとよばれる、活動に近い内容といえます(設計VEについては別の機会に説明します)。